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: まとめ : kaiho-tama : 蒸発、水収支まとめ

降水、その他

筆者の専門の地面熱収支・水収支に話が偏りすぎてしまった。 簡単に、降水に関する研究を幾つか紹介しておく。 HEIFE では、レーダこそ持ち込まなかったが、雲粒子を直接観測する ビデオゾンデによる観測で、氷粒子が多いことなどを観測した Takahashi et. al. 1995[15] なども 行われたが、基本的には地上で観測される降水量と、GMS (ひまわり)などの 衛星からの観測に基づいて行われた。

降水に関しては、その高度依存性が、Itano 1997[5] で示されるともに、 その降水が、同時期に起こること、また総観規模の擾乱が日本と同様に しばしば通過するしそれに合わせて降水が起こることが、 Itano 1998[6] などで示され、また降水現象自身が 局所的でなく、非常に長距離に渡って追跡可能であることなどが Sahashi 1995[13]で示された。 また、大規模なパターンとの関係は、Yatagai and Yasunari 1995[25] などで示された。

これらの内、ごく一部の図を紹介する。 図10は、HEIFE 領域の降水観測値を 高度順に並べたもので、降水量には高度依存性があり、 標高が高い程降水が多いこと、しかし、その降水現象は 局所的におこる独立な物ではなく領域内でほぼ同時に起こることを 示している。

図 10: 高度順にならべた日降水量の時系列 Itano 1997[5]より
\resizebox {8cm}{!}{\includegraphics{heife-rain-timing.epsi}}

また、年降水量の高度依存性も同じく Itano 1997[5]より図11に 示されている。

図 11: 高度と年降水量との関係 Itano 1997[5]より
\resizebox {8cm}{!}{\includegraphics{heife-rain-height.epsi}}

また、降水を追跡した Sahashi 1995[13] では図12のように、 2000km に渡って降水現象が移動して来ることが示されており、 乾燥地の降水は局所的という考えは大きな誤解であることが分かる。 降水は、Itano 1997[5], 1998[6]で示されているように、上空のトラフの 通過と対応した物であることが分かる。 夏期には南東から東の風がこの領域にはいることも示されており、 モンスーンによる水蒸気がこのあたりまで到達していることも 合わせて解析されている。

図 12: 降水現象の追跡例。Sahashi 1995[13]より。
\resizebox {8cm}{!}{\includegraphics{sahashi.eps}}

他にも、Takemi 1999a[16] では雲からの降水の降下中の蒸発を調べ、 降水時に地上で観測される気象変化は蒸発の影響と考えられることを示し、 また、Takemi 1999b[17] では当地で見られるスコールライン あるいは dust storm の 構造を調べ、環境の違いにも関わらずアメリカなどで見られるものと 同様の特徴を持つことを示し、更に Takemi and Satomura 2000[18] では Storm の構造を数値モデルを使って詳しく調べているが、ここでは 割愛する。

エアロゾルやダスト関係では、HEIFE ではダストやエアロゾルの現地観測が 行われており、その結果 Zaizen et. al. 1995[26] ではエアロゾルの粒径分布などの データが示されており、エアロゾル粒子の組成は Okada and Kai 1995[11] や、 Ren et. al. 1995 [12] で示されている。また、大気の濁りに関しては、Kai et. al. 1997[8] に解析結果がある。

他に、Shimojima et. al. 1996[14] では 砂漠の砂から溶出する塩類の組成や、蒸発に伴う移動について議論されている。 蒸発に伴い表層に形成されるクラスターと呼ばれる表面は、 隙間があるせいか蒸発を余り抑制しないとされている。



Ichiro Tamagawa 平成14年1月29日