%   U字管振動  Experiment in Hydraulics
%                         98/03/07  by tonto

\ehchapter{管路の振動流}

  \ehsection{実験の概要}
    水理学の講義では，解析を単純化するために，
    時間的に流れが変化しない，定常流と近似した流れを主に扱っている．
    しかし実際の流れには，流量や流速が大きく変化する不定流が少なくない．
    代表的な不定流にサージタンクの振動流がある．
    このサージタンクの振動流は，例えば水力発電用管路において水流を瞬間的に
    遮断したときなどに発生し，
    水撃波から管路閉鎖弁の破壊を防いでいる．
    
    この実験では不定流のひとつでありサージタンクの振動流と似ているU字管振動をとりあげ，
    この流れの特徴を理解するとともに
    不定流の理論を実験を通して学ぶ．


  \ehsection{装置・器具}
    透明のビニールホース(太さの異なるもの3本)，
    粘性の異なる流体（水，アセトン，グリセリン），温度計，巻尺，
    ホワイトボード，ストップウォッチ．


  \ehsection{実験要領}
    \begin{enumerate}
      \item  実験水槽の準備．
        \begin{enumerate}
          \item  実験に用いる水の温度を測定する．
          \item  測定された温度から水の動粘性係数$\nu$を調べる．
          \item  実験に用いるビニールホースの内径を測定する．
        \end{enumerate}
      \item  \label{item:u-tube:st0}
             U字管振動の観察．
        \begin{enumerate}
          \item  1本のビニールホースの両端を両手で持ち，
                 ホースをUの字状にする．
          \item  ホースに水を，長さ50 cmほど入れる．
          \item  水の入ったホースの部分の長さ$\ell$を，ホースに沿って測定する．
                 (あらかじめホースの長さを測っておき，水を注入してのちに
                 両端の水面からホースの両端までの長さを測って，$\ell$を
                 算出する方が簡単．)
          \item  ホースの一端を持つ手を固定する．
                 そしてホースの他端の口を親指などでふさいだ後，
                 わずかに持ち上げるなどして，ホース両端の水面の
                 水位に差をつける．
          \item  親指をホースの口から話す．するとホース内の水は動き出し，
                 U字管振動を始める．
                 この振動の様子を観察し，
                 振動が減衰しながら周期運動していることを確認する．
        \end{enumerate}
      \item  U字管振動の周期を測定する．
        \begin{enumerate}
          \item  \refitem{item:u-tube:st0}の要領でU字管振動を発生させる．
          \item  一方の水面の変動に注目する．
                 この水面が一周期のうち最高の水位になった瞬間から
                 数周期後の最高の水位になった瞬間までの時間を測定する．
          \item  測定された時間を周期の数で割って周期を求める．
        \end{enumerate}
      \item  \label{item:u-tube:st1}
             U字管振動の減衰の様子を測定する．
        \begin{enumerate}
          \item  水を入れ，両手で両端を持ったビニールホースの後ろに
                 ホワイトボードを置く．
          \item  \refitem{item:u-tube:st0}の要領でU字管振動を発生させる．
          \item  一方の水面の変動に注目する．
                 それぞれの周期で水面が最高の水位になった瞬間の位置を
                 次々とホワイトボードにマークしてゆく．
          \item  それぞれの周期での最高水位のマークの高さを，
                 静止した水面の位置を基準に測定する．
                 この測定値が各周期におけるU字管振動の振幅に対応する．
        \end{enumerate}
      \item  \label{item:u-tube:st2}
             ビニールチューブ内の水の量を約 1 mに増やして
             \refitem{item:u-tube:st0}から\refitem{item:u-tube:st1}までの
             実験を計5通り行う．
      \item  さらに太さの異なる他の2本のビニールホースを用いて
             \refitem{item:u-tube:st0}から\refitem{item:u-tube:st2}までの
             実験をそれぞれ行う．
      \item  水をアセトンやグリセリンなど他の流体に変更して，水と同様に
             実験を行う．
             ただしこのとき，
             それぞれの流体に対して別々のビニールホースを用いること．
    \end{enumerate}
  
  
  \ehsection{データ整理および解析}
    \begin{enumerate}
      \item  実験でのU字管振動の減衰の様子から水の動粘性係数を求める．
        \begin{enumerate}
          \item  ビニールホースの内径や水の量の異なるそれぞれの実験において，
                 U字管振動の減衰の測定を始めて最初に最高の水位になった瞬間を
                 基準(0周期目，経過時間$t=0$)とし，
                 それぞれの周期での最高水位となった瞬間の経過時間を
                 (測定された周期から)計算する．
          \item  $\mbox{経過時間}t\mbox{(横軸)} \sim 
                 振幅(それぞれの周期での最高水位)a$の対数$\log a \mbox{(縦軸)}$ のグラフを描く．
          \item  グラフの傾きを求める．
                 そして，その値から水の動粘性係数$\nu$を推算する．
          \item  同様に他の流体についても動粘性係数$\nu$を求める．
        \end{enumerate}
      \item  U字管振動の周期の理論値を算出する．
        \begin{enumerate}
          \item  ビニールホースや水の量の異なるそれぞれの実験において，
                 それぞれの実験条件から減衰がなかったものとして
                 周期の理論値を算出する．
          \item  同様に，今度は減衰があったものとして周期の理論値を
                 算出する．
        \end{enumerate}
    \end{enumerate}
    
  \ehsection{考察}
    \begin{enumerate}
      \item  U字管振動の理論式を導く上で用いられる，非定常流れに対する
             ベルヌーイの定理について説明せよ．
      \item  実験で測定された周期と理論上の周期を比較せよ．
      \item  $t \sim \log a$のグラフより，U字管振動の
             減衰の様子を述べよ．
      \item  実験で得られた水の動粘性係数$\nu$の値を水温から求められた
             動粘性係数の値と比較せよ．
      \item  実験全体についての考察.
    \end{enumerate}
    
    
  \ehsection{おまけ}
    \noindent
    {\bf 減衰を含むU字管振動}
    
    U字管振動に関する理論は安田先生の教科書「基礎がわかる水理学」の
    pp.203$\sim$204を参考にすること．
    ここではU字管振動の解のみを記す．
    
    この解は係数の関係から次の3通りになる．
    \begin{itemize}
      \item  $\nu = 0 $ の時には
             \begin{equation}
               \zeta = \zeta_0 \cos \sqrt{\frac{2g}{\ell}}t
             \end{equation}
             すなわち減衰がないため周期$T=2 \pi \sqrt{\ell /2g}$の単振動となる．
             （$\zeta_0$は$t=0$での振幅．）
      \item  $\nu \neq 0 $かつ$(16\nu / D^2)^2 < 2g/\ell$の時には
             \begin{equation}
               \zeta = \zeta_0 \exp \left(-\frac{16\nu}{D^2}t \right) \cos \omega t
             \end{equation}
             ただし$\omega = \sqrt{ 2g/\ell - (16\nu /D^2)^2}$.
             すなわち周期$T=2\pi / \sqrt{ 2g/\ell - (16\nu /D^2)^2}$の減衰運動．
      \item  $\nu \neq 0 $かつ$(16\nu / D^2)^2 > 2g/\ell$の時には
             振動運動をせず，過減衰となる．
    \end{itemize}


      

  \newpage
  