% 担当，玉川
%  2009.4.1 ちょっと改訂 (by tama)

\ehchapter{等流・不等流の水面形}

\ehsection{実験の概要}
開水路の定常流($=$時間的に変化しない流れ)の最も簡単な場合である等流，
つまりどこでも水深が等しい($=$流速も同じ)である流れは，
水に働く重力の流れ方向成分と潤辺に働く摩擦抵抗力が釣合っておこる．

また，そうでない定常流の場合には，流れ方向に水深が変化する不等流になる．
(しかし、流量は定常であればどこでも同じである.)
この場合，いわゆる「不等流の水面形の式」すなわち，水深方向に積分した
「摩擦による損失を考慮したベルヌーイの法則」で水深の変化が記述できる．
そして，この場合，摩擦力を決定する粗度係数を与える必要がある．

本実験では，
\begin{itemize}
\item 水路床の勾配を測定し,

\item 流量や下流端の堰の高さを調節して、水路の中心部分で等流状態をつくり出し，
	その際の流量，流速，潤辺長，水路床の勾配，
	などからManningの粗度係数を求め，

\item 次に，下流端で堰の高さを上げて(要するに適当に不等流状態を作って)，
	不等流状態をつくり出して，
	その水面形を，上で求めた粗度係数を使って計算で得られる水面形と比較する．

\end{itemize}
ことを行い，開水路の流れに対して理解を深めることを目的とする．

\ehsection{実験器具}
ポイントゲージ，定規，堰，パテ, 水路 (アクリル製水路)

\ehsection{実験要領}
\begin{enumerate}
\item 水路床勾配と水路幅の測定
\begin{enumerate}
	\item 水路を堰止めて静水を張り，
	水路に下流端を原点として上流に向けて座標系を設定し，水路の幅と
	水深を求める．(水面が水平だから，水深は水路床を示すことになる．)
	ポイントゲージの先を壊さない用に注意．(水深は水路床と水面の差である)
\end{enumerate}
\item 粗度係数を求める為の等流状態での測定
\begin{enumerate}
\item 通水し，堰の高さを調節して，等流状態にする．
	%通水時のポンプの起動および流量の増加はゆっくりおこなわないと
	%水路全体に渡っての水位の振動現象がおきることがあるので注意．
	水路の中央部分を使い，その両端で水深の差がない (〜小さい) ようにする．
	自分達の技術と忍耐, そして必要な精度を考慮して, どの程度の
	差を許容するかを考えるのが１つのポイント. (考察のポイントでもある)
\item その時($=$等流状態)の流量と水深を計測する．
\item その部分での平均勾配から，Manning の式(`おまけ'あるいは教科書を参照)を
用いて，粗度係数を決定する．(有次元であるので、SI単位系で処理すること)
\end{enumerate}
\item 不等流の水面形の測定
\begin{enumerate}
\item 下流端を堰上げして，不等流状態を作る．
\item 水面の形状と流量を測定する．形状の測定ポイント数は,後で `Manning の粗度係数' を使った不等流の水面形の計算結果と比較することができる程度に行う.
\end{enumerate}
\end{enumerate}

\ehsection{アドバイス}
求めるものは，Manning の粗度係数と，不等流の水面形であるので，
それに必要なものを全部測定するように充分注意する．

\ehsection{レポート}

実験結果と、下記「おまけ」を参考にして以下の作業をしてレポートを提出せよ。
\begin{itemize}
\item 実験結果を整理し，表と図にまとめる．
\item 粗度係数の求め方と結果を述べる．
\item フルード数を求め，流れが常流であるか射流であるかを考え，
測定部分の下流端(常流) あるいは上流端(射流)から水面形の計算を行う．
\item その計算結果と実験結果とを比較し、考察する.
\end{itemize}

水面形の計算は，微分方程式を，小さな区間に分けて，近似的に解けば良い．
数値計算が得意な人はコンピュータで差分計算しても良い．

\ehsection{おまけ}
\subsubsection*{Manning式}
乱流状態の完全粗面の場合，平均流速 $v$ は，以下の式で表される
\[ v =  \frac{1}{n} R^{2/3} I ^{1/2} \]
ここで，$n$: Manning の粗度係数，$R$: 径深
(長方形断面の場合 $R = \frac{Bh}{B+2h}$, $B$:水路幅, $h$ 水深)，
$I$: エネルギー勾配$ = i_0 - \frac{d}{dx}\left( h + \frac{v^2}{2g} \right) $，$i_0$: 水路勾配．

乱流状態の流れの場合，流量から得られる平均流速を $v$ として用いても
大きな誤差にはならない．

\subsubsection*{不等流の水面形の計算法}

長方形断面の開水路の定常流の水面形の計算は以下のようにして行うことができる。
ここで、$x$ は水路の流下方向に取った座標である。

流速 $v$、径深 $R = A/S$ (断面積/潤辺長)、マニングの粗度係数 $n$、
摩擦損失の勾配 (単位長あたりの摩擦損失 $ d h_f/dx = i_f$ と
するとマニング式は式(\ref{Manning})のように書ける。
\begin{equation}
v = \frac{R^{2/3}}{n} i_f^{1/2} \label{Manning}
\end{equation}
変形して
\begin{equation}
i_f = \frac{n^2 v^2}{ R^{4/3}} \label{Manning2}
\end{equation}

\medskip

水路内の水に対して、摩擦損失を考慮した全水頭の式
(ベルヌーイ則＋静水圧＋摩擦損失)は、
\begin{equation}
\frac{d}{dx}\left( \alpha \frac{v^2}{2g} + h + s + h_f \right) = 0 \label{dhdx}
\end{equation}
ここで、$h$は 水深、$s$は水路床の高さ、$h_f$ は摩擦損失水頭。
$\alpha $ は、ベルヌーイ則で出て来る流速を流量より求める断面平均流速で
置き換える時の誤差の係数だが、ここでは簡単に $\alpha = 1$ として計算する。
同様に、マニング式の流速も断面平均流速で置き換え、水路幅を $B$ とすると、
$ Q = Bhv $ と式 (\ref{Manning2}) および、$R = Bh/(B+2h)$より
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dx}\left( \frac{Q^2}{2g B^2 h^2} + h \right)
	+\frac{d s}{dx} + i_f  & = & 0 \\
\frac{d}{dx}\left( \frac{Q^2}{2g B^2 h^2} + h \right)
	+\frac{d s}{dx} + \frac{n^2 \left( \frac{Q}{Bh}\right)^2}{ \left(\frac{Bh}{B+2h}\right)^{4/3}} & = & 0
\end{eqnarray}
ここで、$\frac{d s}{dx}$ は、水路床高度の勾配である。低い方へ向かって水が
流れることが多く、負値になることが普通なので、$ i = - ds/dx $ と定義する
水路勾配を使用することが多い。(\textbf{註}: ここで $x$ によって変化する量が $v$, $h$ と
２つあった式\ref{dhdx}を, 流れに沿って一定値である $Q$ を使って $v$ を消去し、
$h$ の方程式を作っていることに気づくべし)



\medskip

$B$ が一定ならば、
\begin{equation}
\left( 1 - \frac{Q^2}{g B^2 h^3} \right) \frac{dh}{dx} + \frac{d s}{dx} +
	\frac{n^2 \left( \frac{Q}{Bh}\right)^2}{ (\frac{Bh}{B + 2h})^{4/3}} = 0
\end{equation}

だから、水深の距離方向の変化 $dh/dx$ は
\begin{equation}
\frac{dh}{dx} =  \frac{-\frac{d s}{dx} - \frac{n^2 Q^2 (B+2h)^{4/3}}{B^{10/3} h^{10/3}} }{1 - \frac{Q^2}{g B^2 h^3}} \label{hutoryu}
\end{equation}

これをこのまま数値計算すれば良い。

\bigskip

良くある書き換えとしては、\textbf{幅広}の水路の場合、式が綺麗になるので、
その実験での流量等に対応した
等流水深 $h_0$ と限界水深 $h_c$ を使って表すことも多い。

まず $h_0$ は、水深が一定になる状態だから、式(\ref{dhdx})に
$h$ が $h_0$ で一定であること、及び結果として $v$ が $v_0$ で
一定になることを代入すると ($d h_f/dx = i_f$)
\begin{eqnarray}
\frac{ds}{dx} + i_f &  = & 0 \\
\frac{ds}{dx} + \frac{n^2 v_0^2}{R^{4/3}} & = & 0\\
\frac{ds}{dx} + \frac{n^2 Q^2 (B+2h_0)^{4/3}}{B^{10/3} h_0^{10/3}} & = & 0 \label{h0}
\end{eqnarray}

また、ある流量$Q$の時の限界水深 $h_c$ は、比エネルギー $ v^2 / 2g + h $ が
最小になる時の $h$ と定義されるので
\begin{equation}
\frac{d}{dh}\{ \frac{(\frac{Q}{Bh})^2}{2g} + h \} = 0
\end{equation}
より、
\begin{equation}
h_c = \left( \frac{Q^2}{g B^2} \right)^{1/3}
\end{equation}

ここで、水路の幅が充分に広いとすると $B \gg h $ なので、
\begin{equation}
R = \frac{Bh}{B+2h} \sim \frac{Bh}{B} = h 
\end{equation}
(径深は水深)、あるいは、$ B+2h \sim B $(潤辺は水路幅)
と置けるので、式(\ref{hutoryu})は
\begin{equation}
\frac{dh}{dx} =  \frac{-\frac{d s}{dx} - \frac{n^2 Q^2 B^{4/3}}{B^{10/3} h^{10/3}} }{1 - \frac{Q^2}{g B^2 h^3}} \label{hutoryu2}
\end{equation}
式(\ref{h0})は、
\begin{equation}
\frac{ds}{dx} + \frac{n^2 Q^2 B^{4/3}}{B^{10/3} h_0^{10/3}}  =  0 \label{h0_2}
\end{equation}
となり、式(\ref{h0})を代入でき、$B$ や $Q$ や $n$ を消去できて、
\begin{equation}
\frac{dh}{dx} =  \left(-\frac{ds}{dx}\right) \left(\frac{1 - \frac{h_0^{10/3}}{h^{10/3}}}{1-\frac{h_c^3}{h^3}}\right) \label{hutoryu3}
\end{equation}
となる。幅広水路なら、こちらを積分しても良い。この方が電卓でするには楽であろう。
( $h_0$ や $h_c$ はもちろん不等流時の $Q$ などから計算されたものであるべき)

\bigskip

数値計算による積分は例えば以下のように行う。
式(\ref{hutoryu}) あるいは、式(\ref{hutoryu2}) の左辺を $f(h)$ と置くと、
解くべき式は
\begin{equation}
\frac{dh}{dx} = f(h)
\end{equation}
であるので、刻み幅 $ \delta_x$ を適当に決めると (常流の場合 $ \delta_x < 0$ 
として下流側から積分すべき )、$x = i\delta_x$ での水深 $h_i$ は
$x = (i-1)\delta_x$ での水深 $h_{i-1}$ と以下のような関係になる。
\begin{equation}
h_i = h_{i-1} + \delta_x f(h_{i-1})
\end{equation}
つまり、矩形公式の積分を使った漸化式で求めることができる。

積分の精度を上げようと思えば、矩形公式の代わりに台形公式を使い
\begin{eqnarray}
h_{tmp} & = & h_{i-1} + \delta_x f(h_{i-1})\\
h_i     & = & h_{i-1} + \delta_x \frac{ f(h_{i-1}) + f(h_{tmp}) }{2}
\end{eqnarray}
とする、あるいはもっと本格的に３次のルンゲ・クッタ式などを使用する。
また、これら数値計算時には、$\delta_x$ の大きさに解が (有効数字の
範囲内では) 依存しないことを確かめるために、
幾通りか試すことが\textbf{本当は}必要であるが、
最初から十分小さく取るなどで簡易的にすませることも多い。

詳しくは、数値計算の教科書を参照のこと。








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